16_Q社障
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iこの10年ほどで,障害者をめぐる法律問題や権利擁護に弁護士が関わる分野・場面が,急速に拡がってきたように実感している。それは,障害者自立支援法訴訟の「基本合意」に基づく障害者総合支援法の見直し,障害者権利条約の批准に向けた国内法整備(障害者虐待防止法,障害者差別解消法など)など「障害者の完全参加と平等」に向けた大きな流れの中で,障害当事者が地域であたりまえに暮らすことが具体的な実践として全国に拡がったことと無縁ではない。そして「完全な法的能力の保障」(障害者権利条約12条)に向けて障害当事者が積極的に権利主張を行うようになってきたことも大きい。障害者虐待防止,障害者差別解消(障害者雇用を含む),成年後見制度と意思決定支援,介護支給量保障,障害年金認定,精神科病院退院・処遇改善請求,触法障害者の刑事弁護(入り口支援)といった専門的な分野だけでなく,離婚,交通事故,消費者被害,債務問題,遺言や相続,労働問題といった一般的な法律問題とされてきた課題について幅広い対応が求められている。弁護士,司法書士,社会保険労務士等の法律実務家には,それらの課題解決において障害者の特性に十分に配慮することが求められ,また,意識されるようになってきた。どの課題についても,単に当面のトラブルだけに着目するのではなく,障害当事者の生活全般を視野に入れ,その中でどのような方策や社会資源の活用が可能かも踏まえた解決と連携のスタンスが求められるようになってきた。ところが従来,法律実務家には,障害者の社会保障制度の諸施策の理解や活用について身につける機会は,養成過程でも,実務研修においても,ほとんど用意されてこなかった。また,法的課題との関連を意識して,障害者の社会保障制度を実践的に教える文献にも恵まれていなかった。ともすれば,それが,障害者の法的課題に取り組むことへの躊躇にもつながったり,適切な福祉関係機関との連携を妨げる要因にもなっていた。推薦のことば推薦のことば

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