5_国ビ
20/38

4第1部 総論編あらゆる取引が国際ビジネスに登場 国際取引には、あらゆるジャンルのものがある。モノの国際間の取引が貿易であり、伝統的な国際商取引だが、これに伴って、ヒトが提供するサービスや金融関係の国際的な取引が必要となる。国際的な技術の移転・導入は、各種の情報や知的財産権等の取引として把握される。モノやサービスの貿易だけでなく、海外投資や国境を越えた知的財産権やITの活用が重要性を増している。 こうした状況で、国内に存在する多くの法律問題は、国際ビジネスの局面でも類似のものがある。国内ビジネスが経済のグローバリゼーションによって洗練されるに伴って、国内ビジネスを展開する上でも、国際ビジネス法の知識・経験は大きな意味を持つ。その意味で、国際ビジネスに対する理解を深めることは、国内ビジネスに携わる人たちにとっても極めて有益だ。今後、国内・国際を問わず、グローバルな視点からビジネス・ローにアプローチする姿勢は、これからの企業法務において不可欠だ。双方向の対称性 日本から見た場合、国際ビジネスを大きく分類すると、日本国内から外国に出て行くもの(アウトバウンド=outbound)と、外国から日本に入ってくるもの(インバウンド=inbound)があり、更に多国籍企業のガバナンスの問題のように相互の関係が問題となる局面もある。 本書は、これらを広く取り上げるが、日本から外国に出て行く局面と、外国から日本に入ってくる局面とをいちいち区別していない。あくまでも1つの例示として一定の局面における解説をしている場合、そこで取り扱ったのと同様又は類似の問題が逆の局面でもありうる。その意味で、双方向から対称的に問題点を検討することもできよう。 もっとも、国際的なルールは統一されておらず、最終的には国家が別々の法秩序を有しているため、しばしば異なった結論となったり、矛盾した状況が生じたりすることがある。また、強制のメカニズムの差異による不均等が生じたりもする。 一般的には、外国から日本に入ってくるビジネスは、日本法でどうなるかが中心的な課題となり、日本から外国に出て行くビジネスでは日本法のみならず目的地となる外国法が重要な鍵となる。そして、ビジネスが国際性を帯びているという理由で、時として日本法や外国法に加えて、条約その他の国際的なルールが関係することもある。ここに国際ビジネス法の重層性と複雑性がある。

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る