6国際ビジネスの言語13第1章 国際ビジネス法とは、どういうものか 近時、環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacifi c Partnership=TPP)は、米国が離脱して11カ国がTPP11協定として成立し、2018年末に発効するに至った。また、東アジア地域包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership=RCEP)も、日本が中韓両国と初めて結ぶ自由貿易協定を含む複数国間協定(インドが抜けて15カ国で合意)として2020年に成立し、関税の引き下げのほか、データの流通や知的財産等の分野で共通のルールが設けられた。これとは別に、日本初のマルチEPAとして日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP協定)が2008年から物品貿易等の規律から発効しており、物品貿易の自由化・ 円滑化に加えて知財・農林水産分野での協力やサービス貿易及び投資の自由化・保護について交渉が進んでいる。他方、日米貿易協定と日米デジタル貿易協定が2020年1月1日に発効し、一部品目における関税を撤廃又は削減する等の措置がとられている。さらに広範囲の自由貿易圏として、アジア太平洋自由貿易圏(Free Trade Area of the Asia-Pacifi c=FTAAP)も提唱されており、今後の通商の枠組みの動向が注目される。 かかる条約や協定の締結をした国家間ではビジネスチャンスが増える。しかし、これが行過ぎるとブロック経済に陥り、他国を排除するような動きになりかねない。原産地規則のために人為的なネットワークが作られて貿易や投資の流れを歪めるスパゲティボール現象にどう対応するかは、今後の課題でもある。影響力と使用頻度 国際ビジネスでは、その言語が理解できなければ話にならない。現代の国際ビジネスでは、英語のネットワーク外部性により、英語が圧倒的に重要である。国際取引実務では、英文契約書のシェアはかなり高い。例えば、日本の企業と東南アジア諸国の企業の間で締結される契約でも、日本語又は彼らの言語ではなく、英文契約書による場合が圧倒的に多い。それが契約当事者双方にとって公平であり、実務的にも便利であるからだ。 もっとも、中国ビジネスの進展とともに、中国語による契約書の重要性も高まっているほか、他の言語による国際取引契約もあり、英文契約がすべてではない。他の言語を母国語とする人口の規模も大きくなれば、それなりに影響力─ビジネスの共通言語としての英語
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