219第 1 企業買収への対応1)1)日本弁護士連合会司法制度調査会 社外取締役ガイドライン検討チーム『「社外取締役ガイドライン」の解説』(商事法務,第2版,2015)119頁~143頁第10章1 企業買収時の社外取締役の株主共同の利益への配慮 企業買収は,組織再編の一形態です。ここで,組織再編は,効率的な事業運営や事業の拡大または縮小のために会社組織を再編成しようとするもので,合併,会社分割,株式交換,株式移転等のほか,事業譲渡等(事業の全部または重要な一部の譲渡,事業の全部の譲受け全部の賃貸,経営委任,損益共通契約等)による場合があります。 近時事例が増えている,親子会社間や企業グループ内での組織再編等のように経営陣や支配株主の利益と株主共同の利益が相反する可能性がある場合や,当該事業再編等に株主共同の利益とは別の目的が潜在する場合には,経営陣や支配株主の利益が優先されて株主共同の利益が損なわれるおそれがあるという外観を呈することになります。そこで,それを払拭するために社外役員が招集株主の利益も考慮したチェック役としての役割を期待される場面が増えてきています。 なお,組織再編等の場合,会社法は原則として株主総会の特別決議または特殊決議を要求し,反対株主には株式および新株予約権の買取請求権が認められるなど,被買収者である少数株主の発言権を強めたり,少数株主の意に沿わない買収の場合に資金回収の手段を確保するなど,一定程度少数株主の緊急事態への対応
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