ス(ASH)が,非上場子会社を完全子会社化する際に,特定の株主1社(A第 1 企業買収への対応221⑶ 買収価格(比率)とその決定プロセスの公正性 M&Aにおける買収価格(比率)については,売り手であっても買い手であっても,デューデリジェンスの結果を踏まえた独立した専門的機関による算定が望ましいため,仮にこれらがとられていない場合は,その理由を確認する必要があります。また,仮に専門的機関による算定がなされていたとしても,その前提条件等が過剰に楽観的でないか等十分に検討する必要があります。 なお,M&Aにおいては,買収先企業等の客観的継続価値に一定のプレミアムが加算されることが多く,それはシナジー効果(相乗効果)によるものと説明されることが多いです。シナジー効果は実際には経営契約等に定量的に反映できないことも多く,買取価格の交渉の結果生じた株価算定数値の中央値等の乖離をシナジーで説明しているという実態がある場合もありえます。そこで,社外取締役は,これらのシナジー効果の具体的内容を確認した上で,プレミアムに見合ったものかを検証する必要があります。 買収価格(比率)は経営陣の経営判断と相手方との交渉によって決定されますが,実際の企業価値から外れた不当に高いものでないか,その算定のベースとなった事業計画や第三者算定機関が作成する価格算定書の内容のみならず,交渉経過についても十分に検討すべきです。 なお,特に親子会社間や企業グループ間の企業再編の場合には,後述3「MBO,親会社,主要株主による非上場化の場合」も参考にしてください。 事業再編の判断に関する取締役の責任に関する裁判例としては,アパマンショップ株主代表訴訟事件最高裁判決(最判平成22年7月15日判時2091号90頁)があります。これは,上場会社の株式会社アパマンショップホールディング社)を除くすべての株主から,1株当たり5万円で当該子会社の株式を買い取ったことに関し,ASHの取締役らに善管注意義務違反があったとして,ASHの株主が損害賠償を求めた事案です。東京地裁,東京高裁で判断が分かれましたが,最高裁は,経営上の専門的判断については,①決定の過程,②決定内容に著しく不合理な点がない場合には,取締役としての善管注意義
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