第 1 企業買収への対応227向上を企図しているかを経営陣から独立した立場で検証することが,通常のM&Aに比してより重要とされます。たとえば,株価が低迷している状況を奇貨として,単に取締役が自らの利益追求を目的として行うような非上場化は,株主共同の利益を目指しているとはいえません。 なお,株主が納得して判断している限りは,必ずしも企業価値の向上を目的としていなくても(たとえば事業縮小のための非上場化等)否定されるべきではないという意見もあります。この場合,目的の合理性は,手続の公正性および透明性により担保されることとなります。イ 買付価格の相当性とその決定プロセスの公正性および透明性□ 買付価格の相当性 買付価格の相当性については,非上場化に際して実現される価値のうち,非上場化を行わなければ実現できない価値と非上場化を行わなくても実現可能な価値とを区別し,前者については,株主および買付側双方が受けるべき価値と考えられますが,後者については,基本的に株主が受けるべきものという考え方がMBO指針でも紹介されています。ただし,この区別については,個々具体的な状況に照らして判断する必要があるため,一義的・客観的な基準を立てることはできません。□ 決定プロセスの公正性および透明性 非上場化固有の利益相反構造を前提にすると,決定プロセスの公正性および透明性の確保を図ることは重要です。 MBO指針では,①各株主の背景や属性等も十分配慮し,充実した説明を行うこと,②恣意的な判断がなされないよう,社外役員等の意見を求めた上で,株主が判断する等の工夫を行うこと,③対抗買付けの機会を確保する等により価格の適正性を担保する客観的状況を確保すること等が示されています。 具体的には,ⅰMBOを実施するに至ったプロセス等について充実した情報開示,ⅱ業績の下方修正後にMBOを行うような場合等においては,当該時期にMBOを行う背景・目的についてより充実した説明を行うこと,ⅲ取締役と他の出資者(投資ファンド等)の最終的な出資比率や取締役の役職の
元のページ ../index.html#41