刑実
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第 1 編 総論 〜刑事司法・更生支援と福祉の関わり〜注釈実践 ソーシャルワークの正統性と任務は,人々がその環境と相互作用する接点への介入にある。環境は,人々の生活に深い影響を及ぼすものであり,人々がその中にある様々な社会システムおよび自然的・地理的環境を含んでいる。ソーシャルワークの参加重視の方法論は,「生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける」という部分に表現されている。ソーシャルワークは,できる限り,「人々のために」ではなく,「人々とともに」働くという考え方をとる。社会開発パラダイムにしたがって,ソーシャルワーカーは,システムの維持あるいは変革に向けて,さまざまなシステムレベルで一連のスキル・テクニック・戦略・原則・活動を活用する。ソーシャルワークの実践は,さまざまな形のセラピーやカウンセリング・グループワーク・コミュニティワーク,政策立案や分析,アドボカシーや政治的介入など,広範囲に及ぶ。この定義が支持する解放促進的視角からして,ソーシャルワークの戦略は,抑圧的な権力や不正義の構造的原因と対決しそれに挑戦するために,人々の希望・自尊心・創造的力を増大させることをめざすものであり,それゆえ,介入のミクロ─マクロ的,個人的─政治的次元を一貫性のある全体に統合することができる。ソーシャルワークが全体性を指向する性質は普遍的である。しかしその一方で,ソーシャルワークの実践が実際上何を優先するかは,国や時代により,歴史的・文化的・政治的・社会経済的条件により,多様である。 この定義を前提に,刑事司法ソーシャルワークとは,刑事司法の場における福祉的支援です。入口支援においては,刑事司法ソーシャルワークは更生支援計画に基づき,罪を犯した高齢者・障害者等の被疑者・被告人を,釈放後に福祉機関等につなげる支援を行うことになります。出口支援では,矯正施設を出所する高齢者や障害者等に対して,帰住先の調整や就労等の調整を,主に地域生活定着支援センターが担っています。また,地方検察庁や矯正施設,更生施設等に勤務している社会福祉士もソーシャルワークを実践しています。 今後,この領域の更なる社会的な認知度が高まることを期待しています。2 刑事司法ソーシャルワーカーとしての専門性とその担保 実際,刑事司法の場において福祉的支援を行うとなれば,その領域つまり刑事司法に関する知識がなければなりません。これについては,第1編第24

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