刑実
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第 1 章 「刑事司法ソーシャルワーク実践」総論7 また,重要な視点は,ソーシャルワーク専門職である社会福祉士が,刑事司法ソーシャルワークを実践していることにあります。以下では,この実践について説明していきます。上述の「ソーシャルワークの定義」注釈でソーシャルワーク専門職の実践に示されているように,「ソーシャルワークの正統性と任務は,人々がその環境と相互作用する接点に介入にある。」とし,その実践は「さまざまな形のセラピーやカウンセリング・グループワーク・コミュニティワーク,政策立案や分析,アドボカシーや政治的介入など広範囲に及ぶ。」と定義しています。刑事司法ソーシャルワークにおいても,福祉につなぐ介入方法は同様です。高齢者や障害者等の社会的弱者の権利擁護を主体に,社会資源の創出,社会環境の改善,社会参加の促進等に向けての社会福祉活動は,ミクロ(個人)及びローカル(主に地方の福祉ネットワーク)な範囲で行われています。 ソーシャルワークの理念や原則は,所属する機関が検察庁,刑務所,少年院,保護観察所等の場合,あるいは協働する相手が弁護士の場合等,その組織や他専門職の論理と矛盾し対立することもあります。それは司法文化と福祉文化の違いによるものと考えられ,協働する前提として,互いにその違いを理解し許容することが重要と思われます。 そして,ソーシャルワークの実践の一部である政策立案や分析,アドボカシーや政治的介入を,刑事司法ソーシャルワーカーが実際に行うことはほとんどありませんが,少なくとも可能性はあり,その点を視野に入れた姿勢自体がソーシャルワークの果たす社会的意義を深めていると言えるでしょう。4 刑事司法ソーシャルワーカーの機能 ところで,ソーシャルワークの取り組む目標は,大きく四つに分けられています(社団法人日本社会福祉士会「新 社会福祉の共通基盤第2版(上)」のソーシャると思われる二つの目標を挙げ,刑事司法ソーシャルワークの機能について述べていきます。 一つ目は,クライエントとの問題解決能力や環境への対処能力を強化するため,側面的援助機能,代弁機能,直接処遇機能,教育機能,保護機能が求ルワーカーの機能を参照)。その中で,刑事司法ソーシャルワークに特に関係す

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