刑実
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第 1 編 総論 〜刑事司法・更生支援と福祉の関わり〜8められます。二つ目には,クライエントと必要な社会資源との関係構築・調整のため,仲介機能,調停機能,ケアマネジメント機能がソーシャルワーカーには求められています。 その中で刑事司法ソーシャルワーカーの機能として,主に代弁機能,仲介機能,調停機能,ケアマネジメント機能を取り上げて説明します。もちろん,上記3の支援プロセスでは,刑事司法ソーシャルワーカーの機能が発揮されていると捉えられます。 以上に記したことは,ある意味でソーシャルワーカーから見れば,自明のことでもあり,取り立てて述べるまでもないことのようでもあります。しかし,いま確認したことを起点にして,そこから,刑事司法ソーシャルワーカーの目標,機能に沿って論理的に支援していく視点も必要と考えて,ここに二つの項において実践での機能について述べていきます。⑴ 生き抜くための「その人らしさ」への支援:仲介機能とケアマネジメント機能 刑事司法ソーシャルワーカーは本人との接見,弁護士や家族等からの話し,本人の障害の程度や診断,生育歴,生活環境,犯罪時の状況等の情報を把握し,本人の「その人らしさ」をイメージしてから更生支援の検討に入っていきます。ここでは,対象者である被疑者・被告人の高齢者や障害者が釈放された時に,福祉関係機関と結びつける仲介機能を果たしています。そして,釈放後,地域等で包括的なサービス利用により安定した生活が継続され,本人が社会で生き抜くことができるように,必要な社会資源を利用可能にするケアマネジメント機能が求められます。 例えば,丁寧な言葉使いではありますが,協調性がなく施設等での生活ではトラブルが発生する,一人暮らしをしていたが金銭管理はできない等の事例です。このような本人の状態を「その人らしさ」と捉えれば,刑事司法ソーシャルワークの仲介機能として,金銭管理は社会福祉協議会の自立生活支援事業を利用すること等が考えられます。それは,多様な問題を抱えている「その人らしさ」による生き辛い環境を,なるべく取り除くことへの支援と言えます。そのため,福祉サービス等の社会資源を包括的に

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