第 1 章 「刑事司法ソーシャルワーク実践」総論11援と包摂的支援)の対応が強く求められ,多くの実践事例でその成果が見えてでの支援(入口支援)へ〜 我が国では,2002年に設置された犯罪対策閣僚会議によって,「犯罪に強い社会の実現のための行動計画─『世界一安全な国,日本』の復活を目指して─」が策定されました。平穏な暮らしを脅かす身近な犯罪の抑止等の重点課題を設定する等,治安回復のための基本方針を示し,犯罪防止に向けた取組は官民一体となって取り組まれてきました。 その頃,福祉を無縁として生きてきた一定数の高齢者や障害者が刑務所内に収容されている事実については,山本譲司が著書『獄窓記』(新潮社,2003)によって明らかにしました。これにより,刑事司法について,人々の関心が示されるようになりました。 これらを背景に,2006年,長崎県の社会福祉法人愛隣会の田島良昭理事長を代表とする厚生労働科学研究「罪を犯した障害者の地域生活支援に関する研究」により,『獄窓記』で指摘されたような刑務所出所後の問題等が詳細に調査されています。この問題解決のため,厚生労働省は地域生活定着支援促進事業(第1編第3章2「福祉の視点から」で詳細を述べる。)を導入することとしました。そして2009年,厚生労働科学研究「触法・被疑者となった高齢者・障害者への支援の研究」の調査結果により,逮捕勾留時からの支援が必要と認識されるようになりました。 このように,刑務所出所の事後支援(出口支援と継続的支援)は重要であるとしながらも,一方で,再び矯正施設に入所しないように,あるいは再犯に及ばないように,被疑者・被告人の段階で福祉につなぐという事前(入口支きたところです。 そして2014年に犯罪対策閣僚会議は「宣言:犯罪に戻らない・戻さない~立ち直りをみんなで支える明るい社会へ」を決定し,刑務所出所者の仕事と居場所の確保等に向けて取り組んでいます。 その出所者の福祉的支援機関において中核的役割を担っている地域生活定着支援センターの業務として,特別調整においてはコーディネート業務・フォローアップ業務・相談支援業務を行っています。つまり,出所直後の環
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