刑実
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第1 章第 2 編 ケーススタディ 〜項目別・事例別に学ぶ実務のポイント〜第 さて,刑事司法ソーシャルワークは被疑者・被告人の立場にある,個人を対象にしていることからミクロソーシャルワークと言えます。これから,その支援プロセスについて簡潔に述べます。具体的な実践での解説等は,次章以降で詳しく説明していきます。 平成28年版犯罪白書によると,高齢者の検挙人員は,我が国の高齢者人口の増加率をはるかに上回る勢いで,平成20年までは著しく増加し,そのまま高止まりとなっています。高齢者の場合,認知症や精神障害が疑われる者も含まれ,その罪名別検挙人員は窃盗の割合が高い傾向となっています。女性の刑法犯検挙人員についても,やはり高齢化が顕著であり,罪名別に見ると,窃盗(そのうち約8割が万引き)の占める割合の高いことが特徴となっています。精神障害者等では,窃盗が最も多く,次いで傷害・暴行となっています。精神障害といっても統合失調症,感情障害,双極性障害等,様々ですが,服薬がなされず精神障害が重くなり犯罪に及んだ事案もあります。居住地については,住み込み寮を追い出された者,ホームレスで帰住先のない者等の様々な理由で住所不定となり無職である場合が多く見受けられます。 では,実際の個々の事案の対象者はというと千差万別です。例えば,同じ女性高齢者の窃盗で括られても,一つとして同じ更生支援計画にはならないことからも,対象者本人は複数の生活課題を抱えているといえます。それは過去の生き辛さを抱えた環境を,現在まで引きずっている事も起因しています。したがって,支援計画は,対象者の生き辛さを少しでも解消していく環境作り,言い換えれば環境を変えることに他ならないのです。160入口支援における刑事司法ソーシャルワークの支援プロセス第 1 生活課題を抱えた対象者

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