第 2 編 ケーススタディ 〜項目別・事例別に学ぶ実務のポイント〜6 行政機関との連携・調整(生活保護・年金・手帳取得等) 既に軽微な犯罪で逮捕された高齢者や障害者に関わっているという行政機関も多くあります。例えば,生活保護を受給中に逮捕され勾留された場合,生活保護は停止(あるいは廃止)されます。釈放後,本人は生活保護担当課に行き,保護開始の申請(あるいは改めて申請)を行うことになります。 そして障害者の場合,障害者手帳を取得して,障害者年金受給の申請手続,障害支援区分認定の申請,福祉的就労支援につなげること,また,グループホーム等の居住場所について,障害者支援担当課等に相談することも考えられます。高齢者の場合は軽度の認知症が疑われれば,高齢者支援担当課にて要介護認定審査の申請をして,介護保険サービスを利用するよう支援計画に盛り込みます。このような高齢者や障害者等へ制度として行われている福祉サービスは,本人の経済的安定と生活支援のために行政機関との連携を欠かすことはできません。 直接行政機関が関わらなくても,委託事業先に協力を求めることもあります。その場合,委託事業先から行政機関に連絡されて,行政機関も把握していることが往々にしてあります。例えば,地域包括支援センターや障害者相談事業所は,行政の委託事業であるので行政機関にも報告され,情報を共有しています。7 更生支援計画書の作成 更生支援計画は,刑事司法ソーシャルワーカーが見立てを作成し,支援会議で検討し,構築していきます。したがって,今後の支援先である福祉関係機関等が招集された会議では,本人情報としてフェイスシートやアセスメントシートを配布し,本人の状況を共有します。それとともに,刑事司法ソーシャルワーカーが見立てとして記載した更生支援計画簡易版等を配布し,各自の具体的な役割等をより明確にしながら協議することになります。 そして,最終段階で簡易版が完成し,その後は,計画に基づいて本人釈放後に福祉的支援を実行する段階となりますが,その支援内容について本人の同意を得ておくことが不可欠です。 弁護人は,福祉的支援計画が実行されることで再犯を防止できることを立166
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