はじめにi 刑事司法ソーシャルワークの取り組みは始まったばかりです。刑務所などに収容されている高齢又は障害のある方への福祉的な支援の必要性が唱えられ,釈放後に必要な福祉サービスを調整する地域生活定着支援センターが全国で設置されたのは2009年です。刑務所に社会福祉士や精神保健福祉士が配置され,検察庁に「社会復帰アドバイザー」等の名称で社会福祉士が配置されるようにもなってきたのは,この10年程の事です。 私がソーシャルワーカーとして初めて刑事弁護に関わったのは,障害を持った青年が殺人事件の被疑者とされた事件でした。10年ほど前の裁判員制度が始まる直前の頃でした。事件が起こってから裁判に至るまで1年以上の年月を要しました。この間,しばしば開催された弁護団の会議に参加させていただきました。加害者家族の生活の支援とメンタルケアを行いました。生まれて初めて裁判所の証言台に立ちました。この時期に刑事司法への関心を持っていた県内外の福祉支援者と意見交換もしました。「犯罪加害者やその家族の支援をする必要があるのか?」との批判を受けることもありました。誰もが経験が乏しく方法論を持っていませんでした。刑事司法ソーシャルワークの黎明期でした。 現在の私は,子どもからお年寄りまで,障害の有無にかかわらず全ての方を対象に24時間365日対応する,福祉の総合相談事業所に籍を置いて地域で起こった諸問題に関わっています。そんなソーシャルワーカーの立場で刑事司法の領域でのお付き合いをさせていただくことがあります。 ご家族から相談をいただいて刑務所等に一緒に面会に行くことがあります。逮捕や保護をされた後に警察から相談の連絡をいただいたら警察に出向きます。起訴猶予になった方の支援を検察から依頼されることもあります。出所後の支援を刑務官,ご家族,他の支援者と一緒に考えることもあります。そして弁護士と一緒にお付き合いさせていただくことも多くあります。 目の前にいる方の背景がどうであろうと,私たちソーシャルワーカーが行は じ め に
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