第 2 編 ケーススタディ 〜項目別・事例別に学ぶ実務のポイント〜います。)に照会をかけてくれました。その結果,現状4か月被疑者が通院しいます。この場合も,事前に被疑者から,弁護人が福祉関係諸機関に被疑者の個人情報・刑事事件の情報を提供することについて,被疑者の同意書を取得します。 本件では,被疑者の同意書を得ることができました。ただ,取得の時期は,勾留10日目となってしまいました。被疑者が生活保護を受けていることから,生活保護課の担当ケースワーカーや,障害担当課に対し,聴取を行いました。その結果,被疑者の精神疾患の病名は統合失調症であること,被疑者が以前に,一度医療保護入院になったことがあること等が聴取できました。さらに,障害担当課が被疑者の通院先の病院のソーシャルワーカー(以下,「SW」といておらず,被疑者の現状が不明である,被疑者は興奮すると人の話を全く聞き入れないので,在宅での被疑者のコントロールは難しく,通院を確保することは困難と考えている等の情報を得られました。4 医療機関からの情報取得 被疑者の通院先医療機関が分かれば,医療機関から情報を取得します。この場合も,事前に被疑者から,弁護人が医療機関に被疑者の個人情報・刑事事件の情報を提供することについて,被疑者の同意書を取得します。 情報取得の方法としては,主治医に事情聴取を行うという方法や,弁護士会照会(弁護士法23条の2)等を行い診断書やカルテを取得するという方法があります。もっとも,弁護士会照会での診断書・カルテ取得は,手続に相応の時間がかかるために捜査段階では間に合わないことが多いです。 本件では,被疑者の同意書を得ることができましたが,その時期が勾留10日目になってしまったこと,主治医の出勤日が少なく,勾留満期日までの面談実施が不可能であったこと,さらに,通院先病院のSWから被疑者の通院確保が困難との情報を得たことから,主治医への事情聴取や弁護士照会等は実施しませんでした。172
元のページ ../index.html#50