刑実
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第 2 章 項目編173第 本件については,国選弁護人から社会福祉士会に福祉専門職の関与を求める相談があり,千葉県社会福祉士会司法福祉委員会からのマッチング支援事業で,勾留中の被疑者の接見に弁護人と同行することになりました。 捜査段階において,まず刑事司法SWとしてしなければならないことは,どのような状況にいた時に事件を起こしたのか,本人の心身の状態や置かれていた環境を明らかにするために情報を集めることです。 では,被疑者の状況を理解する上で,どのような情報が必要でしょうか。岩間伸之(注1)は通常,事例を理解するための基本枠組みとして三つの視点を提示しています。①現状の客観的理解,②生活歴の理解,③本人からの理解です。 ①現状の客観的理解とは,データとして収集できるもの,例えば性別や年齢,居住地家族構成,経済状況,心身の状態,疾病,支援体制等です。②生活歴の理解とは,時間の経過を基軸とした理解,つまり加齢に伴う心身や障害の変化,家族構成や社会的役割等の変化です。③本人からの理解については,「……とりわけ3つめの本人からの理解,つまり本人自身が自分の世界から何を考え,何を感じているかを理解することが重要となる。……本人の世界から理解を深めることが求められる。」と,述べています。 今回の接見においても,まず被疑者についての客観的な情報や事件の概要を得る必要があります。1 弁護人からの依頼内容の確認と被疑者に関する情報の確認 弁護人がどのような意図で刑事司法SWに依頼してきたかを確認するとともに,被疑者のこれまでの生活等について情報を集めます。 今回の事件において弁護人からは,「精神疾患を持っているようで意思の疎通が難しいので,接見に同席し,話をしてみて欲しい。また,社会復帰後の支援計画を一緒に考えて欲しい。」という依頼でした。 この時点での被疑者に関する情報は,社会福祉士会から送られてきたマッチング依頼書の内容(性別と年齢,事件の概要)と精神障害者手帳を持っている第 3 ポイント解説(福祉士編)

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