刑実
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第 2 章 項目編175と拒食を繰り返してきた),「ここに来て10日以上たつけど,保護費(生活保護費)入るかな?」,「携帯,刑事さんに渡したけど返してもらえるかな?」否定されたと感じるような言葉や雰囲気により,会話が中断してしまわないように気を付けました。 弁護人から内容の指示はなかったので,面会はあらたまった質問形式でなく,話しやすさを優先し,雑談のように進めました。勾留中の今の思い,事件を起こした頃の生活の様子,自宅にいた時の支援者や福祉サービス,キーパーソンとなる人の確認等をしながら,本人の生活を映像のように捉えたいと考えました。 話から見えてきたのは,孤独な被疑者の姿でした。⑴ 勾留中の生活について 夜は眠れるの?「ゆうべは眠れなかった。2時頃まで起きていた。今日もそうだといやだな。」薬は?「薬は飲んでる。今の薬は誰が出してくれたのかなぁ。」誰か面会に来てくれた?お母さんは?「面会には誰も来ない。お母さんともずっと会ってない。」⑵ 自宅にいた時の暮らしについて 友達はいたの?「たまにメールをするくらい。寂しがり屋だけど,一人が好き。」 食事は?「朝,昼,3時のジュース,それでおしまい。」お酒は?「500mlのビールを4~5本。」病院は?「A病院B先生,2年ぐらいになるかな。入退院を繰り返した。」誰かに来てもらっていた?「看護婦さん。2週間に1回。病院の先生が決めてくれたけど,辞めちゃった。」薬は?「毎日飲まなくちゃいけないのに3か月ぐらい飲んでなかった。」⑶ 心配なことや希望 心配なことはある?「規則正しい生活ができるかな?」(これまでも過食 気がかりなことを聞く中で,現状をどのように考えているか,今後の生活に対する思いを聞き出したかったのですが,明確な気持ちを引き出すことはできませんでした。ただ,規則正しい生活をしなくてはいけないこと,精神薬を服薬しなくてはいけないことは分かっていることなどは聴取でき

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