刑実
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おわりに363 当会では,60を超える委員会が設置され,基本的人権の擁護と社会正義の実現のためにさまざまな活動を行っています。特に最近は官民を問わず,外部の組織・団体との連携の重要性が強く認識されるようになり,対外連携に積極的に取り組む委員会も増えています。例えば社会福祉の関係では,社会福祉委員会を中心にして福祉分野との連携が強化されており,貧困問題に関わりのある団体が集まって情報交換・意見交換を行う「貧困問題に関する懇談会」の定期的な開催や,その発展型とも言える「福祉と司法の千葉県連絡協議会」の設置,そして同協議会による勉強会・シンポジウム等の活動が行われてきました。 刑事司法の分野では,刑事弁護センター,子どもの権利委員会,社会復帰支援活動援助制度運営委員会などを中心に,法律実務家としての立場から,再犯防止・更生支援のための取組みを推進してきました。もっとも本書のメインテーマである刑事司法ソーシャルワークへの取組みはまだまだ道半ばであり,委員会によるさらなる取組みや会員の意識向上が必要ではないかと思っているところです。おそらく刑事司法ソーシャルワークについては,全国的に見ても,まだ緒に就いたばかりというところが多いのではないかと思います。 他方で,我が国における刑法犯の現状に目を転じると,検挙数自体は減少しているものの,再犯者率は増加しつづけており,とりわけ,刑務所出所後も犯罪を繰り返す高齢者・障害者への対応がクローズアップされるようになってきました。中には刑期を終了して社会復帰しても,社会内で生活することが出来ず,刑務所に入ることを意図して再び犯罪に手を染める人もいる,という状況になっているのです。こうした状況のもとで,再犯防止の方策としても,「刑罰による矯正」という考え方から,「福祉的ケアによる再犯防止,生活再建」という発想の切り替えが求められる時代になっているのだと思います。お わ り に

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