若弁改訂
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2  職務上請求により取り寄せた戸籍謄本・全部事項証明書等(以下「戸籍謄本 慎重に考えるべきです。解 説 取り寄せた戸籍謄本等の交付を依頼者から要求されることはしばしばあることです。しかし、戸籍謄本等に記載された情報はプライバシーに関わるものですので、裁判所に提出しないものは、正当な理由がない限り、たとえ依頼者であっても交付することはできません。裁判所に提出するものでも、戸籍謄本等を依頼者に交付することで問題が生じるおそれが考えられるような場合(DV加害者である依頼者が相交付することはできません。ストーカー規制法違反の刑事弁護人が虚偽の事実を記載して相手方の世帯全員分の住民票の写しを請求した事案や、受任事件と何ら関係のない相手方の親族に関する情報を依頼者に漏示した事案で懲戒処分がなされた事例があります。戸籍謄本等は、あくまで事件処理のため弁護士の資格において特別に取得が許されているものであるため、依頼者の費用で取得したとしても、依頼者に交付することが当然に予定されているものではありませんので、依頼者に対し、その旨を説明し理解を求めることになるでしょう。 もっとも、証拠として提出した戸籍謄本等の写しの交付を求められた場合、その目的(理由)を問い、それが正当でないときは拒否すべきですが、特段問題のない場合にまで拒否することは、受任者の立場からして困難と思われ、交付が許されないとまではいえないでしょう。証拠化する必要があるか(資格証明書類のような扱い 職務上請求で取得した戸籍謄本等の取扱い自体も慎重にしなければなりません。そこで、例えば、閲覧制限のかかった裁判所記録のように「別綴り」にして、取り寄せた書類と、その他の書類とを区別してファイリングする等の工夫をするのもよいでしょう。請求手続を事務職員にお願いしていることが多いでしょうが、プライバシーの問題を普段から注意喚起し、手引き等は事務職員にも読んでもらっておくとよいでしょう。 職務上請求に関しては、日弁連会員専用サイトに掲載されている職務上請求の手引き・Q&A等を確認してください。§ 2  職務上請求により取得した戸籍謄本等の証拠提出キーワード 【職務上請求】【戸籍謄本等】【弁倫】【証拠利用】【プライバシー】【再婚】等」といいます)の写しを、依頼者の要求に応えて渡してよいですか。手方の住所地に乗り込む可能性がある場合等)には、たとえ依頼者であっても安易にができないか)も慎重に検討すべき場合があると思われます。 第1章 情報収集と情報の取扱い

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