point❸ 厚労省報告書によると,自身が性的少数者であることを伝えている理由については,「自分らしく働きたかったから」「職場の人と接しやすくなると思ったから」「特に明確な理由はない」などの割合が比較的高いことが示されています。一方で,トランスジェンダーにおいては,「トイレや更衣室など,施設利用上の配慮を求めたかったから」「ホルモン療法や性別適合手術を受けることになったから」「異動における配慮を求めたかったから」「会社の福利厚生制度を利用したかったから」など,労務管理上の配慮のためにカミングアウトした割合が一定程度みられます。業員らと親しくなり,プライベートな事項についても会話を交わすようになりました。クライアント企業の従業員である佐藤里香は,太郎に対し,「彼女はいるの?」などと何かとプライベートな質問をするので,太郎は,自分の交際相手を女性と偽って回答するなどしていました。しかし,太郎に交際相手がいると知った里香は,さらに関心をもって,「今度彼女も一緒に食事をしましょう。」などと重ねて言ってきたので,太郎は,里香に対し,これ以上嘘は付けないと思い,自分はゲイで,交際相手は男性であることを伝えるとともに,他の人には言わないよう伝えました❸。第4節 モデルストーリー4 (SOGIハラ事案)29【Scene3 上司からの呼出し】 太郎は,直属の上司である課長の黒木啓介から,「話がある。」と言われ,会議室に呼び出されました。会議室には次長の白川康太もいたので,太郎は,「何の話だろう。」と不審に思いました。黒木は,「君がクライアントの従業員に同性愛者であることを伝えたことで,クライアントの従業員から,『一緒に働きたくない。』という声が上がっているとのことである。」,「クライアント先で自分がゲイであることなど話すべきではない。自分がどんな病気にかかっているとか,自分の身内の問題のことなど,話さないのが常識だ。」,「君には,このプロジェクトから外れてもらうことになるかもしれない。」と話しました❹。 太郎は,佐藤里香がクライアント内で太郎がゲイであることを話してしまったことにショックを受けるとともに,黒木が白川の前で太郎
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