point❹ 黒木が太郎の性的指向に関し,カミングアウトを制限したことは,パワハラ指針におけるパワハラの一類型「個の侵害」(私的なことに過度に立ち入ること)に,病気と同等に扱うかのような発言をしたことは,「精神的な攻撃」で例示されている「相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動」に,それぞれ該当すると考えられます。がゲイであることを伝えたこと,黒木が性的指向について病気や他の問題と同様に捉え,佐藤里香へのカミングアウトが不適切であると非難したことにも大きなショックを受けました。 また,黒木が太郎の承諾を得ずに太郎の性的指向を白川に開示したことは,パワハラの一類型「個の侵害」で例示されている「労働者の性的指向・性自認や病歴,不妊治療等の機微な個人情報について,当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること」(「アウティング」)に該当します。「アウティング」については,一橋大学ロースクール事件控訴審判決(令和2年11月25日東京高判)において,「人格権ないしプライバシー権などを著しく侵害するものであって,許されない行為」であると判示されており,これは「アウティング」の違法性について言及した初めての判決とされています。第1章 ハラスメント事件の概要(モデルストーリー)クライアントから…ショック30課長次長(黒木)呼出(白川)太郎!【Scene4 相談窓口の対応】 SYテクノソリューションズ株式会社には,ハラスメント相談窓口が設置されており,コンプライアンス部の従業員が担当する社内相談
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