19_明日ハラ
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point❺  事業主は,労推法30条の2項により,パワハラの発生を防止するための措置を講じる義務(いわゆる措置義務)を負っており,措置義務の内容についてはパワハラ指針に定められています。パワハラ指針では,相談窓口を設置するとともに,パワハラ発生後,事実関係を迅速かつ正確に確認すること,被害者に対する適切な配慮や再発防止策の実施等が義務付けられています。また,パワハラ指針では,相談への対応や事後の対応に当たり,相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに,その旨を労働者に対して周知することとし,相談者・行為者等のプライバシーには,性的指向・窓口と,外部の弁護士が担当する社外相談窓口の2つがありました。太郎は,社内相談窓口に相談した場合,他の従業員にも自分の性的指向を知られてしまうおそれがあると考え,社外相談窓口に相談することにしました。 太郎は,社外相談窓口を担当する誠野純子弁護士と面談し,一連の経緯を説明するとともに,「社内でどこまで自分の性的指向が知られてしまっているのか分からず,不安で眠れない。」,「このようなことが今後発生しないよう,きちんと調査をしてほしいが,自分の性的指向が他の従業員にも知られてしまうのは困る。」と話しました。誠野弁護士は,太郎に対し,「まずは,黒木課長及び白川次長に,木村さんの性的指向を誰かに伝えたかどうか,伝えた場合はそれが誰かを確認します。黒木課長及び白川次長には,アウティングがパワハラに該当することを説明し,更なるアウティングを絶対にしないように伝えます。」,「調査を進める場合,ヒアリングの対象者は,黒木氏と白川氏の2名を予定しています。ハラスメント相談規程により,コンプライアンス部の本部長及び部長には相談内容を共有する必要がありますが,いずれも守秘義務を負っています。性的指向は機微な個人情報ですので,他の従業員に知られることのないよう十分に留意して取扱いをするようにします。また,調査結果を代表取締役に伝える必要がありますが,その場合には相談者が特定されないようにしますので,ご安心ください。」と話しました。太郎は調査を進めることを承諾するとともに,同様のハラスメントが発生しないよう,有効な再発防止策を講じてほしいと伝えました❺❻。第4節 モデルストーリー4 (SOGIハラ事案)31

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