セクハラについては,2006年の男女雇用機会均等法の改正により,マタハラについては,2016年の育児介護休業法の改正により,それぞれ事業主がハラスメント防止対策を講じる義務を負うこととなり,遅ればせながら,パワハラについても,2019年の労働施策総合推進法の改正により,事業主が上記義務を負うこととなりました。いずれの法令についても,ハラスメント行為自体を法律上禁止していないという点で,不十分な内容であるとの批判はありますが,セクハラ,マタハラ,パワハラという主なハラスメントについて,事業主にハラスメント防止対策が義務付けられたことは大きな前進といえます。また,カスタマーハラスメントが社会問題化する中,事業主にカスハラ防止策を講じる義務を課すなどにより,従業員の保護を図るべく,厚生労働省が労働施策総合推進法の改正を検討している状況にあります。 このように,ハラスメントについては,関係法令の整備が進められている状況にありますが,ハラスメントに関する報道が日々なされていることや労働局へのハラスメント関連の相談が増加していることからも示されるように,ハラスメントは職場において依然として大きな問題であり,労働者,事業主双方とも,どのような言動がハラスメントに該当するのか,ハラスメントを防止するにはどうすればよいか,その都度悩み対応している状況です。例えば,上司がパワハラと非難されることをおそれて,部下に対する指示指導を控えてしまうことや,マタハラに関する知識が欠けているがために無意識に妊娠出産等を理由として不利益な取扱いをしてしまうことも見受けられます。 人生100年時代と言われるように,今後,仕事をする期間も否応なく延びていくことが見込まれており,仕事をすることに充実感や幸福を感じられるかどうかは,個々人の人生の豊かさにますます大きな影響を及ぼします。ハラスメントが発生すれば,被害を受けた労働者はもちろん,他の労働者のモチベーションが下がり,ひいては企業全体としての生産性が低下し,有能な人材の流出にもつながります。個々はしがきiは し が き
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