第 1 「内縁」の発生~戦後の民法改正前の「内縁」1法 744 条)や婚姻には戸主の同意を必要とするとの規定があったため(明治民法 750 条),法定推定家督相続人である長男と長女や,戸主の同意を民法 17 親族⑴』(有斐閣,2017)84〜85 頁。なお,1920 年代における一般社会の内縁率は 16〜17%)。 婚姻届を出さない(民法上の婚姻の要件を満たさない)男女の関係につき,民法は何も語っていません。 他方で,婚姻の届出を出さずに,当事者の意識や生活実態においては夫婦同然に暮らす男女のカップル(共同生活を送る一対の男女)が存在します。このようなカップルを「内縁」と呼んできました。とりわけ明治民法下では,家制度の下で,法定推定家督相続人の去家禁止規定(明治民得られない者は婚姻の届出ができませんでした。また,嫁が家風に合うと評価されるまで,あるいは跡取りを生むまでは婚姻の届出をしないという風習(「足入れ婚」「試婚」)があったこと,明治民法制定によって法律婚主義(届出主義)が導入されても,婚姻の届出に関する一般の人々の知識や認識度が低く,届出がされにくいという事情もありました。 なかでも工場・鉱山等の労働者層に内縁の夫婦が多く,1925 年に実施された社会局の調査では,内縁率は全国の工場の内,男性 20.2%,女性 30.3%に達しており,当時の届出制度が庶民にとって利用しにくいことも届出をしない原因だったと指摘されています(二宮周平編集『新注釈 婚姻の届出のない限り,男女のカップルには原則として何らの法的効果も与えられません(扶養義務,子の嫡出推定,配偶者相続権など)。そこ事実婚とはⅠ 内縁・
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