内縁・事実婚・同性婚の実務相談
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Ⅱ 内縁・事実婚の法的規律の沿革79〜82 頁),通説的な地位を占めていくことになります。他方,判例で頁。内縁妻の療養及び葬儀費の内縁夫による負担義務を肯定した大判昭 7.8.25 評論21 巻 122 頁)。条(婚姻費用分担義務)の規定は,内縁に準用されるものと解すべきで66する問題や,不法行為の加害者など第三者に対する損害賠償請求をめぐる問題を解決することはできませんでした。判決が実際に保護しようとした関係は,もはや予約段階ではなく,本契約の履行に入った準婚関係であったため,婚姻に準じた法的効果を認めるべきであり,その不当破棄は不法行為と構成すべきであるとして,学説は判決の法的構成を批判しました。 婚姻予約有効判決に対しては,1930 年代以降,内縁を婚姻に準じた関係(準婚関係)と捉えて,民法上の婚姻に関する規定の準用を主張する見解(内縁準婚理論) が登場し(中川善之助『民法Ⅲ』(岩波書店,1933)も,内縁を法律上の婚姻と同視することにより結論を導くものが現れてきます(内縁の妻の日用品供給の先取特権を肯定した大判大 11.6.3 民集 1 巻 280 こうした中で,戦後の最高裁は,内縁の不当破棄の事案について従来の婚姻予約不履行による損害賠償請求を認めるとともに,内縁は「男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては,婚姻関係と異るものではなく,これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。」「内縁も保護せられるべき生活関係に外ならない」として内縁の不当破棄者に対する不法行為を理由とする損害賠償請求を認めるに至りました(最二小判昭 33.4.11 民集 12 巻 5 号 789 頁)。また,同判決は「民法 760あ」るとして,別居中に支出した医療費について,相手方に分担義務があると判断しました。最高裁判決は,「内縁準婚理論」を採用したものであり,以後これを踏襲する裁判例が続々と登場し,判例として確立していくことになります。

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