2 共同生活の実体 内縁が成立するためには夫婦としての共同生活の実体があることが要件とされます。一般的には,同居が一定期間継続していれば共同生活の実態があると認定されます。問題は,同居期間が短い場合や,そもそも同居していない場合について内縁の成立が認められる場合があるのかという点です。 判例は,「婚姻の意思」が強固に認められる場合,例えば挙式し,新婚旅行にも出かけ,同居生活を始め 2 週間余りで相手方が事故死したが,残された女性が喪主として葬儀を執り行ったという事案について内縁の成立を認めています(前掲千葉地裁佐倉支部判決)。また,同居に類するような協力関係があれば,内縁の成立を認める裁判例があります。例えば,大阪地判平 3.8.29 家月 44 巻 12 号 95 頁は,国家公務員である男性 A の死亡退職金の受給権が,男性の兄弟姉妹との間で争われた事案について,「A と被告とは互いに別々の住まいを持っていたとはいえ,前記認定のとおり,互いに相手方のマンションに行き来して,特に Aは被告のマンションに頻繁に寝泊まりして生活し,夫婦としての宿泊旅行もしており,また,前記認定の事実からすれば,身体的に虚弱な Aは被告を精神的にも日常生活の上でも頼りにし,被告もこれに応えて生活していたものであり,A と被告との間には,精神的にも日常の生活においても相互に協力し合った一種の共同生活形態を形成していたものと認められる」として「事実上の夫婦」と認定しています。 なお,最一小判平 16.11.18 判時 1881 号 83 頁は,共同生活をしたことがなく「特別の他人」として約 16 年間にわたり婚姻外の男女関係を継続してきた事案で,一方的に関係を解消した者(男性)に対する慰藉料請求を否定しています。判決は,当事者が意図的に婚姻を回避していることⅢ 内縁・事実婚当事者の民法上の権利・義務(婚姻の意思の欠如)及び住居を異にしており,共同生活をしたことが全く14
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