iは し が き 結婚という「制度」は,人々の結合と誓約の特殊な形態であり,何世紀にも亘り,幾多の個人的かつ社会的意義を担ってきたものです。私たちは同様の意味内容を持つ代替的形態を作り出すことはできないのであり,それはあたかも,ピカソの絵や源氏物語の代替物を作り出すことができないのと同様でしょう。 したがって,結婚を享受する人々の地位は,代替不能な価値を持った社会的「資源」というべきものなのであり,結婚しているカップルは,婚姻届の有無,同性・異性の違いにかかわらず,等しくこのような「資源」にアクセスすることが許容されるべきではないでしょうか? ところで,私たちの社会には,婚姻の届出を出さずに当事者の意識や生活実態においては,夫婦同然に暮らす男女のカップルが存在します。しかも,意図的に婚姻届出を出さないカップルも増えており,婚姻外カップルは多様化しています。 近時,超高齢社会の到来に伴い,中高齢者が離別・死別によりパートナーを失い,単身となった後に長い老齢期を過ごすにあたり,親しいパートナーを得て共同生活を送る例が増えています。「再婚」すると,配偶者相続権が発生すること,不仲となっても離婚が難しく,財産分与の問題が生じること,氏の変更や祭祀の承継問題等から,「非婚」を選択する場合があります。 一方で,同性カップルについては,現行民法が婚姻を男女のものとしており,婚姻の届出をすることができません(「婚姻障害」)。 このように,婚姻外カップルの多様化に伴い,婚姻外カップルの具体的な結合のあり方に即して,いかなる法的効果をどの程度与えるべきなのかが今日的な問題となっています。 婚姻外カップルの権利・義務関係は,当事者の意思に沿って契約法等の財産法によって規律することができます。パートナーシップ契約や任意後見契約を締結する,残された当事者のために遺言・信託を行うなどの事前の手立てをす
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