内縁・事実婚・同性婚の実務相談
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はしがきiiることによって,離別や死別による関係解消時に,社会的・経済的に弱い立場にある当事者に法的保護を与えることができます。 婚姻外カップルの多様化に伴い,契約等による事前の規律が今後ますます重要になると思われます。 わが国では,届出のない点を除いては婚姻関係と異ならない夫婦の結合としての内縁関係について,民法は何らの規定も設けていません。明治民法の下で,社会的・経済的に弱い立場におかれている内縁の妻の救済をどうするかが問題となりました。戦前戦後の判例や社会法分野での立法を受け,1958 年,内縁準婚判例が登場します。 最高裁は,内縁は「男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合」である点において,これを「婚姻に準ずる関係」というを妨げないとし,内縁が正当な理由なく破棄された場合には,不法行為による損害賠償の請求ができるとし,民法 760 条の規定を類推適用して,婚姻費用の支払いを命じました。その後,判例は,財産分与規定(民法 768 条),日常家事債務の連帯責任(民法 761 条),帰属不明の財産の共有推定規定(民法 762 条)などを内縁に類推適用し,法の欠缺を補充して(「欠缺補充」),内縁の妻に婚姻に準ずる法的保護を与えてきました。 また,社会法領域では,今日,当該カップルが事実婚関係にあると認定されれば,「配偶者」として,社会法上の受給権を取得することができるようになっています。例えば,遺族給付は死亡していた者により生計を維持されていた「遺族」に支給されることになっており(生計維持要件),内縁・事実婚当事者は,相続人である子,父母に優先して第一順位の受給権者となります。 重婚的内縁関係(戸籍上の妻がいる内縁関係)や近親婚的内縁関係など,民法が重婚や近親婚を明文の規定で禁止しているため,婚姻届が出せない内縁・事実婚カップル(「婚姻障害」による内縁・事実婚)についても,判例は,重婚的内縁については,法律婚が形骸化し,事実上の離婚状態にある場合,近親婚については,三親等の傍系血族(おじ・めい関係)であって反倫理性・反公益性が著しく低い特段の事情がある場合に,内縁・事実婚の成立を認め,一定の法的保護

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