i 使用者は労働者を解雇・雇止め・懲戒する権利を有していますが,いずれもその行使に当たっては,労働契約法において,「客観的に合理的な理由」及び「社会通念上の相当性」が求められており(解雇については16条,雇止めについては19条,懲戒については15条),これらの権利は制限されています。この権利の制限の基準は,法文上では,上記のとおり「合理的」,「社会通念上」といった,極めて規範的な文言で規定されているため,実務で遭遇する事案において,使用者が企図している解雇,雇止め,懲戒が法的に可能であるか否かの判断は,実際に上記基準によって判断された前例,つまりは裁判例に当たって,それを参考に行うより他に有効な方法がないのが実情です。 そうした趣旨で,日本加除出版株式会社より企画を頂き,「判例解説 解雇・懲戒の勝敗分析」を2020年4月に出版したところ,望外の反響を頂き,今日に至りました。 しかし,裁判例は,実務における解雇・雇止め・懲戒の可否の判断に有効(というより,他に有効な指標がない)なものである一方で,①基本的に,当該事案についての個別的判断によるものであり,実社会において解雇・雇止め・懲戒が問題となる事案と同じ事案は二つとないこと,②生起する新事案に応じて次々と新規のものが発生し,それらは,従来の就業環境では見られなかったもの,或いは一見従来の判断と視座を異にするとも見られること(もっとも,詳細に裁判例の事案を精査すれば,「異なる」とまでは言えないことが多いのですが。),といった性質を有しています。換言すれば,裁判例の知識とそれから得られる教訓は,常に積み上げをしつつ,新しいものに合わせてアップデートしなければ,徐々に陳腐化する(最悪の場合,変遷に取り残される)ことがあり得ます。 このような見地に沿って,今般「判例解説 解雇・懲戒の勝敗分析」第2版を刊行するに至ったところです。その内容としては,初版刊行後の裁判例を中心に取り上げ,初版同様に,①事案の概要,②事実認定と評価に関するはしがきは し が き
元のページ ../index.html#5