4 むち打ち症状が完治せず症状固定となった場合、それ以降の治療費は相手方任意保険からは支払われません。 それでは、残存した症状に対する賠償はどうなるのでしょうか。この場合には、主治医に「後遺障害診断書」と呼ばれる専用の診断書を作成してもらった上で、加害者の自賠責保険に対して被害者請求手続(後遺障害等級申請)を行います。症状固定から被害者請求手続までは、概ね1〜2か月ほどの時間がかかります。 申請を受け付けた自賠責保険は、一件資料を損害保険料率算出機構自賠責損害調査事務所に送付し、調査事務所が後遺障害の有無や程度を調査します。調査終了後、調査事務所は調査結果と一件資料を加害者の自賠責保険へ返却し、自賠責保険から被害者へ結果が通知されます。序章 日本の交通事故賠償実務って?1 事故日から完治または症状固定まで(=治療期間) 事故後、被害者はむち打ち症状に対する治療を継続して受けます。むち打ち症状は、治療を開始した後、緩やかに軽快し、1か月ないしは6か月ほどで完治する場合が多いです。症状が完治した場合には、事故日から完治した日までの間に発生した被害者の損害の計算を行い、相手方任意保険と示談交渉を行うこととなります。 しかし、半年以上通院治療を続けても、むち打ち症状が回復しない場合もあります。その場合、損害賠償上「症状固定」と判断されます。症状固定とは、これ以上治療を続けても医学的に症状が良くならない状態をいいます。 法的な治療期間は、事故日から症状固定日までの期間です。相手方任意保険が支払う治療費も症状固定日までとなります。症状固定の診断は、担当主治医が被害者の症状の回復状況などを確認しながら行います。2 症状固定から自賠責保険に対する被害者請求手続(後遺障害等級申請)まで3 被害者請求手続から自賠責保険の認定結果(後遺障害等級の認定結果)通知まで
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