3_高齢交通
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3治療費支払の実務 1 いわゆる一括払い4保険診療・自由診療 1 健康保険診療過剰診療とは、診療行為の医学的必要性ないしは合理性が否定されるもの、高額診療とは、診療行為に対する報酬額が、特段の事由がないにもかかわらず、社会一般の診療費水準に比して著しく高額な場合である4)。理論的には、被害者が、診療契約に基づく債務の履行として医療機関に支払った治療費を、交通事故による損害として、加害者に請求することになるが、実務的には、加害者を被保険者とする対人賠償責任保険の保険者から医療機関に対し直接治療費が支払われていることが多い。このような実務運用は、「一括払い」といわれている5)。一括払いにおいては、医療機関から保険者に対し、自賠責保険の定型の診断書、診療報酬明細書が送付され、それに基づく支払がなされている。自賠責保険診断書については、傷病名、症状の経過、検査所見を確認することは当然に必要であるが、既往症及び既存障害が記載されていれば、因果関係や素因減額の問題も生じるので十分な調査が必要となる。交通事故による傷病の治療であっても健康保険を利用することは当然に可能である。被害者の実質的な救済のためにも健康保険による診療を十分に活用すべき4) 赤い本(2020上)1頁、医療費をめぐる問題については、江口保夫ほか『交通事故における医療費・施術費問題(第3版)』(保険毎日新聞社、2019)5) 一括払いの法的性質については、大阪高判平成元年5月12日判タ705号20240頁2 自賠責保険診断書

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