3_高齢交通
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41ことは東京地裁民事第27部(交通専門部)に在籍した裁判官による東京地裁民事交通訴訟研究会からも指摘されるところである6)。また、昨今は、犯罪や交通事故の被害者の健康保険の利用を事実上妨げかねない取扱いがなされていることから、厚生労働省保険局保険課長・国民健康保険課長・高齢者医療課長から、日本医師会長・日本歯科医師会長・日本薬剤師会長宛「犯罪被害者や自動車事故による傷病の保険給付の取扱いについて」との通知が出されている7)。なお、健康保険を利用した場合、保険者に対し、第三者行為による傷病届を提出する必要がある。健康保険の保険者は、保険給付を行った後、加害者ないし加害者を被保険者とする対人賠償責任保険の保険者に対して求償する。ただし、健康保険給付については、過失相殺前控除の取扱いがなされていることから(後述314頁)、被害者の損害額には直接影響を及ぼすものではない。被害者の損害として問題となるのは一部負担金の範囲となる。自由診療の場合は、診療報酬額によっては高額診療として、加害者が負担すべき損害であることが否定される。もっとも、損害の範囲を検討する前提として、診療契約の当事者である医療機関と患者との間でいかなる診療報酬額についての合意が成立しているのかが問題となる。この点につき、東京地裁平成元年3月14日判決(判時1301号21頁)は、患者と医療機関の間における診療報酬額につき、1点単価10円として診療報酬額を算定する健康保険の基準をふまえ、薬剤料は1点単価10円、それ以外は10円50銭としている。加害者が負担すべき損害としての治療費についても、東京地裁平成23年5月31日判決(自保ジ1850号1頁)、東京地裁平成25年8月6日判決(交民46巻4号1031頁)は1点単価10円としている。6) 別冊判タ38号4頁「ア 国民健康保険による診療」7) 平成23年8月9日保保発第0809号第4号・保国発第0809第3号・保高発第0809第4号第1 治療費2 自由診療

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