3_高齢交通
45/54

2因果関係 1 相当因果関係43囲を画する必要がある。加害者が負担すべき損害の範囲を画定するには、まずは、事故と相当因果関係が認められる範囲が問題となる。交通事故の場合、予見可能性による判断枠組みになじみにくいことから、「相当因果関係」が認められるかどうか、こと治療費については、赤い本や青本をふまえ、必要性、相当性が認められるかどうかと議論されることが多い。もとより、相当性にしろ、必要性にしろ、極めて抽象的な内容であるから、具体的にその範囲を示すことは極めて難しいといわざるを得ない。既往症を有しており、事故前から治療を受けていた場合、事故前から必要であった治療費は事故によるものではないといえるとしても、事故を契機として治療内容を変更したり、同じ薬効の異なる薬に変更した場合などは判断に窮する。時間的経過に従い軽快するのが外傷による症状の通常の経過であるといっても、実際にどんどん重篤化し、遷延する症状を全て事故による症状ではないと否定できるわけでもない。交通事故の場合、因果関係の判断が困難な場合、自賠責保険における判断が先行することもある。通常は、一括払いの対応を行っている対人賠償責任保険の保険者が、自賠責保険の事前認定を受けている場合である。自賠責保険の判断が裁判所を拘束するわけではないとしても、自賠責保険で因果関係が否定されている場合、事故と因果関係があるとの評価を得るのは容易ではない。とはいえ、自賠責保険で因果関係が認められるとしても、傷害については保険金額120万円の範囲を超えると、もはや自賠責保険の問題ではなくなるので、長期化、遷延化した症状において、自賠責保険の判断がなされているわけでもない。第2 治療費に関する高齢者問題2 自賠責保険の事前認定

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る