自原住
51/70

 7542) 谷口知平ほか編『新版注釈民法(3)』(有斐閣、2003)514頁は、意思の通知、観念の3 建物明渡請求権の履行遅滞 使用損害金は、賃借人が負う目的物返還義務の履行遅滞に基づく損害賠償請求権(改正前民法415条)である。それ故、建物明渡請求権が履行遅滞に陥っていることを主張立証する必要がある。 履行遅滞による損害賠償請求権の発生要件は、ⅰ)債務の発生原因事実、ⅱ)ⅰの債務が履行遅滞に陥っていること、ⅲ)ⅰの履行遅滞が債務者の責めに帰すべき事由によること、ⅳ)ⅰの履行遅滞が違法なものであること、ⅴ)損害の発生及び額、ⅳ)ⅱとⅴの因果関係の存在、である。 しかるところ、建物明渡請求権は、それが発生したときに直ちに履行されなければならないものであるから、発生と同時に履行遅滞となっている。また、ⅲは債務者において帰責事由のないことを主張・立証すべきものとされている(抗弁)とされているので、ⅲは要件ではない。ⅳについても債務者において違法性阻却事由のあることを主張・立証すべきものとされている(抗弁)ので、ⅳは履行遅滞の要件事実ではない。ⅵは履行遅滞と損害との間に因果関係があるのが通常なので、通常はその主張・立証を省略する。 それ故、使用損害金を請求するには、上記ⅰの建物明渡請求権の発生及びⅴの損害(額)を主張・立証すれば足りる。但し、本設例においては、損害賠償額の予定についての合意が存するので、ⅴの損害(額)については、次の賠償額の予定についての合意の存在を主張・立証すれば、損害及びその額を主張立証する必要はない。4 賠償額の予定に係る合意の存在 月8万円の割合による使用損害金を請求するためには、その旨の合意があったこと、即ち、賃貸借契約締結時に、X市条例39条1項2号による明渡しの場合の使用損害金の額について同条4項に定めるところによる旨合意したこと、それが月8万円であることを主張立証する必要がある(上記⑩)。て扱ってよい42)。通知等の準法律行為についても民法97条は準用されるとしている。 第1 使用者に対する滞納使用料等請求訴訟  

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る