2第1 従業員との契約形態45員の間の契約が雇用契約と解されることがあります。 運送事業者と従業員の間の契約が雇用契約と解された場合、当事者間には労働基準法や労働契約法等、労働関係法規が適用されることになります。 運送事業者と従業員の間に労働関係法規が適用される場合、運送事業者は、労働時間法制や労働条件の不利益変更、解雇権濫用法理等の規制を受けることになります。 一方、運送事業者と従業員の間の契約が業務委託契約(請負契約や準委任契約等)と解された場合、当事者間には労働関係法規が適用されないことになります。 このように、運送事業者と従業員の間の契約関係がどのように解されるかは、運送事業者における労務管理を左右する重要な問題といえます。 詳細については後述しますが、運送事業者からすれば、従業員との契約が雇用契約ではなく業務委託契約等であると解された方が、労務管理のコストを削減することが期待できます。 実務上、運送事業者が労働関係法規の適用を回避するために、従業員との契約を雇用契約ではなく業務委託契約等にしようとするケースが見られます。 もっとも、運送事業者と従業員との契約が形式的には業務委託契約であったとしても(例えば、契約書の表題が「業務委託契約書」となっているようなケース)、実質的には雇用契約と変わりがない場合、運送事業者と従業員との契約の法的性質の解釈が争われることになります。 これは、従業員が「労働者」にあたるかどうかという「労働者」性の問題といわれています。 従業員が「労働者」に該当すると判断されると、事案の解決にあたり、労働基準法、労働契約法、労働災害保険法、労働組合法等の労働関係法規が適用されることになりますが、「労働者」性が否定されると労働関係法規が適用されないことになります。 労働関係法規が適用されるかどうかによって、労務管理の在り方やコスト、また労働紛争の解決方法が異なります。 運送事業者が労務管理を検討するにあたっては、まず従業員との間の契約がどのような法的性質に分類されるのかを整理・把握しておく必要があります。
元のページ ../index.html#31