はしがきi Amazonに代表されるインターネット通販の爆発的普及・EC市場の拡大に伴い商流の中に占める物流の重要度が一層高まっている現状において、運送業は、企業にとっても個人にとっても欠かすことができない重要な基幹産業といえます。 しかしながら、輸送産業を担う運送業界では、全産業平均と比べて、長時間労働・低賃金が常態化しており、「2割長く2割安い」職業とも指摘されています。運送業界を取り巻く労働環境は他業種と比して厳しい状況にあることを反映し、人手不足・労働者の高齢化が加速する傾向にあります。そして、厳しい労働環境にあることを反映し、運送業界では労働紛争が少なくありません。人手不足による長時間労働の常態化に起因する未払残業代請求や、過酷な労働環境に起因する過労死等の労働災害、採用難や離職率の高さに伴う労働契約の終了に関わるトラブル等、様々な場面に応じた労務紛争が見受けられます。 さらには、今般、各界に甚大な被害をもたらしている新型コロナウイルス(COVID-19)流行からくる被害への対策(外出自粛による屋内消費の激増に伴う業務過多からくる労働環境の悪化・人離れ、製造業の縮小及び一部停止による事業への圧迫)など、課題は山積しており、運送業界は「人手不足⇔人員確保のためのホワイト運送業化」といった、迅速かつ過酷な対応を迫られる、厳しい状況が続いています。 一方、政府は、「働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革」として、「働き方改革」の実施を推進しています。また、このような働き方改革の流れを受けて、2019年には改正貨物自動車運送事業法が施行されました。さらに、2020年には、働き方改革関連諸法の施行が一層本格化しただけでなく、100年に一度といわれる民法の大改正も施行されました。 運送業界は、従前から厳しい労働環境にある中、今般の感染症対応に伴う急激な外部環境の変化に加え、相次ぐ重要な法改正に伴うコンプライアンス
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