不動産鑑定と訴訟実務
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第1章 民事紛争と不動産鑑定10ない場合の賃料(不動産鑑定評価基準上は「新規賃料」という。)と比べ紛争化しやすい。その理由について,家賃(☞第4章)と地代(☞第5章)に分けて,順に検討していく。賃料それ自体が争点とならない場合でも,民事事件において不動産の時価(ないし価格)が争点となる際に賃料が問題となる場面は多い(☞第7章)。不動産の時価が問題となる場面とは,不動産取引(売買,M&A等)のほか倒産,課税,競売等様々な場面がある。「時価」が争点となった際に,不動産の収益性を求める場合は収益還元法を適用することになるが,この手法には賃料査定が必要になる。また家事事件においても賃料について検討する場面は多い(☞第8章)。例えば,相続法改正により新設された「配偶者居住権」(民法1028条)の評価について,税務上の評価の場合は固定資産税評価額で代替されているが,審判等で正式に評価を求める場合には日本不動産鑑定士協会連合会による実務指針に基づく評価(賃料ベース)になる(☞第8章Ⅲ)。このように価格(時価)の解釈をめぐっては賃料が援用される場面は多い。本書が賃料(☞第3・4・5章)を価格(☞第6・7・8章)に先行して扱っているのは,このような理由による。⑶ 価格の算定の際に賃料が援用される場面

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