(試し読み)家庭裁判所における監護者指定・保全の実務
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1 子の監護者指定の基準 子の監護者指定は,裁判所が過去の事実を認定して法的評価を下すという通常の司法判断と異なり,家庭裁判所が両親の子どもに対する過去の監護実績等を踏まえた上で,将来を予測して,両親のうち,子の健全な成長をより促す者はいずれであるかを後見的に判断するものである。そして,その判断基準は,離婚に際して親権者・監護者を指定するのと同一の基準,すなわち,民法766条1項にいう「子の利益」である。2 子の監護者指定の判断過程 「子の利益」は,抽象的かつ一般的な概念であり,具体的な基準を示すことは難しいものである。実務上,子の監護者指定の判断をするに当たっては,まずは判断に必要な事実を収集し,これを分析・評価して,判断の基礎となる事情としてまとめた上で,判断の基礎となる事情を,これまでの実務の集積から導かれた判断の指針(考慮要素)に照らしつつ,多角的な観点から総合考慮した上で,結論を導くという過程をたどることが多い。⑴ 判断の基礎となる事情 子の利益を判断するために必要な事実は多岐にわたるものであるが,実務上,判断の基礎となる事情としてまとめられるものは,大きく次の4点に分類される。第2章42 第2章 監護者指定の基準(子の利益)とその判断過程監護者指定の基準(子の利益)とその判断過程

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