(試し読み)家庭裁判所における監護者指定・保全の実務
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4 子の意向(心情)調査⑴ 意 義 子の意向や心情を明らかにするため,子ども自身にアプローチする調査である。 子の意向(心情)は,子の監護者指定・子の引渡し事件等の審理における重要な判断要素の一つである。家事法65条は「審判によって子が影響を受ける際には子の意思を把握し考慮するよう努めなければならない」と定め,同法152条2項は子の監護者の指定についての裁判をするに当たり,子が15歳以上の場合は子の陳述を聴かなければならないと定めている。 子は,発達途中にあるため,物事への理解,思考,表現等に制約がある。そこで,表出された言葉をそのまま字義どおりに受け止めるのではなく,その子どもの発達や置かれた環境,与えられた情報などの背景事情を踏まえて理解することが不可欠となる。そのためには,子どもの発達に関する知識や子どもの特徴に応じた面接技法など行動科学の知見を用いた家裁調査官による調査を活用することが重要となる。⑵ 概 要78 第5章 家裁調査官による事実の調査(各論)① 定 義照会,嘱託を行うこともある。面接においては,担当者の記憶や印象ではなくできる限り客観的なデータに基づく情報提供を求めたり,担当者の認識や考えではなく実際に起こった具体的な事実について聴取することが肝要である。 近年,個人情報保護のため調査への協力に慎重な姿勢を示す機関も増えており,調査協力依頼や当事者の同意を文書で求められたりすることがある。 子の意向(心情)とは,父母の紛争や自身が置かれている状況をどのように捉えているのかといった子の現状認識,両親や家族への思い,現在や今後の生活への希望や不安など広範な認知や感情をいう。「どちら

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