(試し読み)家庭裁判所における監護者指定・保全の実務
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はしがき i 子の監護をめぐる紛争は,社会情勢の変化に伴い激化しており,家庭裁判所における子の監護をめぐる事件数も増加の一途をたどっている。 子の監護をめぐる紛争の傾向としては,子の監護者指定・子の引渡し事件に併行又は前後して行われる保全処分や離婚調停,婚姻費用分担調停等の紛争も生じることで,当事者間の利害が錯綜すること,子の監護者指定等を求める別居親(非監護親)は,子どもを早期に元の生活に戻すことを望むことで同居親(監護親)と激しく対立し,その対立関係等が子どもの心情に大きく影響を与えることが挙げられる。 本書は,子の監護者指定・子の引渡し,保全処分の各事件手続の解説を行うとともに,子の監護をめぐる紛争に巻き込まれる子どもへの配慮と当事者の自主解決力を援助することの重要性を示すものである。 本書の特徴は,以下のとおりである。 第1に,第1編の知識編において,昨今の実務の状況を紹介するとともに,抽象的でイメージの湧きにくい「子の利益」という監護者指定の判断基準とその考慮要素を解説することにより,子の監護者指定・子の引渡し事件に関する実務上の重要な知識を示した。その上で,第2編のケース編において,実務上よくある論点を組み込んだ架空のケースについて,合意による解決や審判に至るまでの審理過程を物語風に示し,第1編で解説した知識を実務の流れの中で具体的にイメージできるようにした。このように第1編の知識を踏まえて第2編の実務の流れをたどることで,抽象度の高い子の監護者指定に関する概念的な知識を実用的な知識として実務に活用していただくことを目指している。 第2に,第2編のケース編においては,審理の過程で使用される様々な書面の例を載せ,それぞれに各書面の「読解」の頁を設けた。各々のケースによって当然これらの内容は異なるものではあるが,参考となるはしがき

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