(試し読み)家庭裁判所における監護者指定・保全の実務
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130 序章 プロローグ過ごせないことは残念だが,玲奈が気分転換をして機嫌よく過ごしてくれる方が良いと思い,子どもたちと一緒に料理をしたり,公園やキャンプに出掛けたり,祖父母宅で過ごしたりして週末を過ごしていた。 拓斗はぜんそくの発作を持っていたが,保育園入園と同時に始めた水泳が良かったようで風邪をひくこともなくなり,小学校1年生で四泳法をマスターして,いずれは選手コースにと誘われていた。岳斗はとても活発で,転んだり,ぶつかったりで怪我をすることが多かった。生き物が大好きで,週末に虫取りに行くのをとても楽しみにしていた。4 夫婦関係の悪化 平成30年8月,拓斗が小学校に入学した年に二世帯住宅建築の話が持ち上がり,これに反対する玲奈に浩一が説得を続ける中,11月に融資を受けられることとなった。しかし,これがきっかけとなって夫婦の考え方の相違が表面化し,急速に夫婦関係が悪化することになった。 平成31年の正月,浩一は例年通り家族で実家に行こうとしたが,玲奈は,実家に行けば二世帯住宅の融資の話をなし崩し的に受け入れざるを得なくなるとの思いから自宅に留まった。そのため,浩一は,子どもたちだけを連れて実家に赴くことになった。とはいっても徒歩数分の距離であるため,拓斗と岳斗は祖父母宅と自宅とを行き来していた。 浩一も浩一の両親も,玲奈が感情的な行動を見せるのは珍しいことではなかったので,さほど深刻には受け止めていなかった。しかし,玲奈は,正月に実家を訪ねないという強い姿勢で二世帯住宅の建築に反対の態度を示したにもかかわらず,真剣に受け止めてもらえなかったことで,自分の気持ちを軽んじられていると深く傷ついた。 そして,松が取れても玲奈の気持ちは上向くことはなく,むしろ日常生活に影響が出るほど悪化し,拓斗の新学期の提出物への目配りがなくなり,岳斗の保育園の持ち物の準備もおろそかになって,二人の忘れ物が立て続くようになった。 さらに2月には小学校から連絡がつかないとのことで浩一に連絡があったり,保育園からの連絡で岳斗の連絡帳の記載がないことを知った浩一が連絡帳の記載をするようになった。 浩一は,こうした玲奈を責めることはなかったが,二世帯住宅にすれば玲奈の負担が軽くなるのではないかとの思い込みから,3月24日の夜,こ

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