(試し読み)家庭裁判所における監護者指定・保全の実務
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序章 プロローグ 131れまで以上に強く玲奈に承諾を迫った。 「もうその話は止めてほしいって何度も言ったよね!」 「でも,もう融資も大丈夫だし,子どもたちのこれからも考えれば,二世帯住宅を建てて一緒に住むことが一番じゃないかな。玲奈にとっても家事の負担も少なくなるし」 「なんでそうなるの! 私は嫌だって言ってるの,分からないの‼」 「なんでそうすぐに大きな声出すかな,子どもたちが起きちゃうよ」 「私が悪いの⁈ 違うでしょ。ねぇ,私がお店手伝った時のこと覚えてるでしょ。オンラインの勉強して,販路も考えて,提案したよね。それがどうなったの? 時代遅れの手作業にこだわって,屁理屈ばかりこねて,ねちねち私の欠点ばかりあげつらって。あんただってそうでしょ,私の肩一つ持つでなく,ぼさっとしてばかりで。 で,なに,ちょっと子どもの弁当作ったり,遊びに連れて行ったからって,全部子育てしてるような顔して,それで育メンのつもり? いい加減にしてよ。あんたに私の大変さが分かるの? 何も分からないでしょ! 私がどれだけ我慢し続けてきたか,分からないでしょ!」 「たしかにね,玲奈のことは分からないよ。分かろうとして努力してきたつもりだけど。晩酌するのも,週末子ども置いて外出するのも,なんでそんなことするのか分からない」 「やっと本心出したじゃない。それでぜんぶ私が悪いと思ってるんでしょ。良い人ぶって,自分だけが我慢してやってるって態度,それが一番むかつくんだよね」 「分かった,もういいよ。我慢してきたのはお互い様だろ。それが苦痛で仕方ないなら出て行ったらいいよ」5 別 居 翌日,玲奈は,拓斗と岳斗を連れて実家に戻った。 着替えや化粧道具をまとめ,拓斗にも衣服や勉強道具を鞄に詰めるよう伝えた。 「どこに行くの?」と尋ねる拓斗に「ママはもうパパとは暮らせないの。けんかばかりでしょ。だから拓斗と岳斗はママとおばあちゃんちでしばらく暮らすのよ,分かったらさっさと荷物を準備して」と急き立てた。 拓斗はさらに「学校,どうなるの?」と尋ねたが,「転校するよ。転校

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