(試し読み)家庭裁判所における監護者指定・保全の実務
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Scene 7202 第1章 事件申立て及び保全処分の審理 草岡裁判官は開廷を告げると,申立人(浩一),相手方(玲奈)双方の本人について,本人確認をした上で,申立書と答弁書,期日間に双方から提出された子の監護に関する陳述書やその他の資料について,それぞれに写しが送付されていることを確認した。 玲奈は,正面に座るこわばった浩一の顔を時折盗み見るように伺いながら居心地の悪さを感じていた。別人みたいに怖い顔を見ていると,私が悪いわけじゃないと強く自分に言い聞かせ,玲奈も唇を引き締めざるを得なかった。 浩一は,何が行われているか分からず,緊張の解けないまま成り行きを見守るしかなかった。裁判官からの質問には永田弁護士が答え,そのやり取りは,審判運営に関する専門用語を中心に行われていて,子どもたちがどのような生活をしているのか,日々どんな気持ちでいるのか,学校や保育園はどうなっているのかといったまずは何より浩一が知りたいと考えている内容ではなかった。 自分から的外れなことを質問して取り返しがつかない失敗をするのではないかと思うと緊張と焦りは高まるばかりだった。 駒場調査官は,当事者双方の緊張を感じ取りながら第1回審判期日の難しさをあらためて感じていた。草岡 「お待たせしました。担当裁判官の草岡です。これから子の監護者指定・子の引渡しの審判とこれらを本案とする審判前の保全処分の審判期日を始めます」草岡 「本案事件,保全事件,いずれについても,期日間に提出された主張書面及び資料について,事実の調査をしましたので通知します。また,ご存じのことだと思いますが,本案事件と保全事件の主張書面,資料はそれぞれ別に提出していただく必要がありますので,同じ書面を提出する場合でも,本案事件,保全事件それぞれについて提出するように気を付けてください。」第1回審判期日のはじまり

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