至らない場合や,一方当事者が手続追行の意欲を失っているだけのような場合に,裁判所がそれまでに収集した資料に基づいて解決案を示して紛争解決を促す趣旨で審判をする制度があります(家事284条。調停に代わる審判)。ただ,審判がなされても,当事者が2週間以内に適法な異議申立てをすれば審判は効力を失ってしまいますので,必ずしも実務上活用はされていません。⑶裁判離婚訴訟に先立つ離婚調停事件において財産分与の附帯請求もされるケースが多いですが,財産分与請求権は離婚した者の請求権ですから(民768条),離婚調停が不成立になれば,改めて離婚訴訟とともに離婚に伴う附帯処分として申し立てる必要があります(人訴32条)。附帯処分申立ては口頭弁論終結時まで可能ですが,財産分与は,本来は家事審判事項であり離婚後2年以内は審判申立てが可能ですので,訴訟の審理内容や進行次第では,いったん申し立てた附帯処分を取り下げるケースもあります。本章2では,離婚成立後になされた財産分与審判における給付命令の射程に関する最高裁判所の判断を解説しています。なお,人訴法は,裁判離婚につき,判決による離婚のほか,訴訟上の和解による離婚や請求認諾による離婚の制度も定めています(人訴37条,民訴266条・267条,戸116条1項)。本章3では,離婚を否定した訴訟における判断が,夫婦同居を命ずる審判に及ぼす影響について判断した興味深い下級審について解説しています。離婚訴訟では,離婚原因の有無や関連損害賠償請求の成否等の訴訟事項だけでなく,本来的には権利義務の具体的な形成にかかる審判事項である附帯処分が審理されることになります。これらの位置づけを誤って主張することのないよう,制度や手続についても正確に理解することが必要です。3(芳仲 美惠子)3 訴訟事項と審判事項4 手続理解の重要性
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