1 夫婦間の離婚訴訟と不貞相手に対する慰謝料請求訴訟最決平成31年2月12日(民集73巻2号107頁)4妻乙は,夫甲に対し,婚姻関係の破綻を理由に離婚等を求める訴訟(以下「離婚訴訟」という。)を家庭裁判所に提起した。これに対し,甲は,乙が第三者丙と不貞行為をした有責配偶者であると主張して請求棄却を求めたが,乙との離婚は希望しないため離婚請求等の反訴は提起せず,地方裁判所に対し,丙を被告として乙との不貞行為に基づく慰謝料請求訴訟(以下「損害賠償請求訴訟」という。)を提起した。●事案の概要●設 問Q.被告丙は,地方裁判所に対して,人事訴訟法8条1項に基づいて,損害賠償請求訴訟を,甲乙間の離婚訴訟が係属する家庭裁判所へ移送すべきことを申し立てた。この移送申立ては認められるか。●回 答A.離婚訴訟の被告が原告との離婚を希望しないため離婚請求等の反訴を提起しない場合でも,原告からの離婚請求が有責配偶者からの離婚請求として信義則上許されないかどうかが主要な争点となっているときには,離婚訴訟の被告から第三者に対する原告との不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟は,人事訴訟法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たるので,同条による移送は認められる。ただし,離婚訴訟の審理の進行の程度によっては,移送が認められないことも有り得る。●主な論点1 夫婦間の離婚訴訟と不貞相手に対する損害賠償請求訴訟との関係2 人事訴訟法8条1項に基づく移送の相当性との関係
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