⑴人事訴訟法17条1項・2項,同法8条1項の趣旨損害賠償請求訴訟は,地方裁判所又は簡易裁判所に管轄がありますが(裁判所法24条1号,33条1項1号),人事訴訟法(以下「人訴法」という。)17条は,人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求(以下「関連損害賠償請求」という。)に係る訴訟については,家庭裁判所に管轄を認めています。すなわち,人訴法17条1項は,人事訴訟に係る請求と関連損害賠償請求は一の訴えですることができるとしており,この場合,人事訴訟に係る請求について管轄権を有する家庭裁判所は,関連損害賠償請求の訴えについて自ら審理及び裁判をすることができると定めています。また,同条2項は,既に人事訴訟が係属する家庭裁判所に対して,関連損害賠償請求に係る訴訟を提起することができると定めています。そして,人訴法8条1項は,家庭裁判所に人事訴訟が係属している場合に,関連損害賠償請求の訴えが第一審裁判所(地裁又は簡裁)に提起されたときは,その第一審裁判所は,相当と認めるときは,申立てにより,人事訴訟が係属する家庭裁判所に移送することができるとしており,この場合に移送を受けた家庭裁判所は,関連損害賠償請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができることを定めています。このように人訴法が規定した趣旨は,関連損害賠償請求は,人事訴訟の請求原因事実を基礎としており,両者の審理判断において主張立証の観点から緊密な関連性があることから,関連損害賠償請求を人事訴訟の請求と併合し,又は反訴の提起を許諾することが,当事者の立証の便宜と訴訟経済の観点に合致しており,かつ,人事訴訟の審理を特に錯綜させ遅延させるおそれがないというところにあります(小野瀬厚=岡健太郎編著『一問一答 新しい人事訴訟制度』(商事法務,2004)10頁・36頁・81頁など)。関連損害賠償請求の例としては,原告が配偶者である被告の不貞行為を原因とする離婚訴訟を提起した場合の被告に対する慰謝料請求や,離婚訴訟の被告が離婚請求を認容されることを条件として被告から原告に対して予備的反訴と51 夫婦間の離婚訴訟と不貞相手に対する慰謝料請求訴訟との関係●解 説1 夫婦間の離婚訴訟と不貞相手に対する損害賠償請求訴訟との関係
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