6して提起する慰謝料請求など,離婚当事者間での慰謝料請求が挙げられます。また,離婚訴訟以外にも,離婚無効確認訴訟とそれに伴う慰謝料請求や,婚姻無効確認訴訟における相手方からの予備的反訴として提起する婚約不履行を理由とする損害賠償請求も,関連損害賠償請求にあたるといえます。さらに,離婚当事者間だけでなく,原告が配偶者に対し離婚請求をするとともに,被告の不貞行為の相手方である第三者に対する共同不法行為を理由として行う慰謝料請求も関連損害賠償請求に当たるとする裁判例もあります(最判昭和33・1・23家月10巻1号11頁ほか)。⑵問題の所在ところで,通常は,離婚訴訟の当事者が,配偶者に対する離婚等請求や反訴を提起したうえで,第三者に対して慰謝料請求を提起することが多いですが,本件のように,被告が,原告が第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して離婚請求の棄却を求めているだけの場合に,被告の第三者に対する不貞行為を理由とする損害賠償請求が人訴法8条1項の関連損賠賠償請求に該当するか否かについては,これまであまり議論がされていませんでした。⑶裁判例及び判断基準① 最高裁平成31年2月12日決定(民集73巻2号107頁。以下「本決定」とい② 本決定の原々審における移送申立ての相手方(損害賠償請求訴訟の原告たる夫甲)の主張は,人事訴訟に係る「請求の原因である事実」とは,離婚訴訟における原告(妻乙)の請求を理由づける事実を指すのだから,被告(夫甲)が抗弁として主張する事実はあたらないというものでした。この考えによれば,離婚訴訟における「請求の原因である事実」は,原告(妻乙)が離婚を請求する原因となる夫婦婚姻関係の破綻を基礎づける事実を指し,被告(夫甲)が離婚請求の棄却を求めて抗弁として主張する原告(妻乙)と第三者(丙)との不貞行為の事実は「請求の原因である事実」に当たらないので,被告(夫甲)の第三者(丙)に対する損害賠償請求は,関連損害賠償請求にならず,損害賠償請求訴訟の被告(丙)による家庭裁判所への移送申立ては認められないことになります。③ しかし,本決定は,前記の夫甲の主張を容れずに,人訴法8条1項の趣旨は,人事訴訟と審理が重複する関係にある損害賠償に関する請求に係る訴訟う。)は,この点についての判断を示した実務上意義の大きい決定です。
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