9_離婚事件
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④ このような最高裁の判断の背景には,人事訴訟に係る「請求の原因である事実」の意味については,原告の請求を理由づける事実という意味で用いられる場合に限られず,用いられている規定の趣旨に照らして解釈してよいという考えがあると思われます。7について,当事者の立証の便宜及び訴訟経済の観点から,人事訴訟が係属する家庭裁判所に移送して併合審理をすることができるようにしたと解されるから,このような趣旨に照らせば,離婚訴訟の被告が,原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であるとして離婚請求の棄却を求めている場合に,被告が第三者に対する原告との不貞行為を理由とする損害賠償請求は,人訴法8条1項における「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たると解するのが相当であると判断しました。原審が,人訴法8条1項に該当しないとしても類推適用できる事案であるとしたのに対し,本決定は,端的に人訴法8条1項に当たると判断しています。そのような考えによれば,関連損害賠償請求に関する人訴法の各規定の趣旨が,人事訴訟と審理が重複する関係にある損害賠償に関する請求についての当事者の立証の便宜と訴訟経済の観点から併合審理をできるようにしたところにあるので,「請求の原因である事実」は,原告の人事訴訟に係る請求を理由づける事実だけでなく,被告がその請求棄却を求めるために抗弁として主張する事実も含まれ得ると解せられます。すなわち,離婚訴訟の被告が,原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して離婚請求の棄却を求めている場合には,夫婦の婚姻関係が破綻していたかの点のほかに,原告と第三者との間に不貞行為があったかの点や,不貞行為よりも前に夫婦の婚姻関係が破綻していたかの点なども審理されることになり,被告の第三者に対する不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟の審理と重複することになるので,離婚請求と損害賠償請求を同一手続で審理することは,当事者の立証の便宜に資することになり,訴訟経済にもかなう場合が多いといえます。1 夫婦間の離婚訴訟と不貞相手に対する慰謝料請求訴訟との関係

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