i第一東京弁護士会全期会は,第一東京弁護士会に所属する弁護士を構成員とし,会員相互の親睦と研鑽及び弁護士会の民主的運営と機能の充実・改善をはかり,もって弁護士の使命の達成に寄与することを目的として,昭和26年(1951年)に設立された任意団体です。事業の一つとして法制度及び法令に関する調査,研究等を行っており,本書もその研究成果の一環として世に送り出すものです。わが国は急激に少子・高齢化社会が進むとともに,男女共同参画の理念のもと多数の女性が社会進出するようになり,夫婦の家事,子育て,生活費の共同分担化が大きく進むなど,家族関係や婚姻関係が大きく変化してきています。これに伴い,離婚に伴う財産分与請求,親権者・監護者の指定,子との面会交流,子の引渡し請求等の紛争が増加し,先鋭的に対立するようになりました。また,配偶者へのDVや子に対する虐待事件が増加し,これに対応する形での家事事件の進め方をどうすべきかなどの大きな問題も生じてきています。さらに,現在の社会状況や生活水準に合わせて養育費・婚姻費用算定表を改訂する必要が生じ,令和元年12月23日に改定標準算定表(令和元年版)が公表されるなど,家事事件を取り巻く状況は大きく変化してきています。本書は,実務につかれてから比較的浅い,もしくは頻繁に家事事件を取り扱わない実務家が参照することにより,すぐに法律相談や調停・審判に役立てられるようにすることを主眼において,離婚,婚姻費用分担,親権等に関する裁判例について多数検討を加え,実務における解決指針を提案するものです。構成にあたっては,実際の判例にあらわれた事例をもとに,離婚に伴う問題事例をなるべく網羅的に取り上げたうえで,冒頭に中心的な判例を掲示し,[事案の概要],[設問],[回答],[主な論点]という項目を設けてそれぞれにつき簡明にまとめて示すようにしました。これに続く[解説部分]では,相当程度高い要求にもこたえられるように,問題の所在,学説と裁判例,判断基準につき極力充実して記述するように努めました。解説部分では冒頭に掲示した判例以外にも関連する裁判例を引用するように努めています。以上により,本書は,離婚事件に熟練した実務家の目にも十分耐えうるものと自負しております。さはしがきはしがき
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