労判
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第5 退職・解雇頁)178職願に対する承認は,採用後の当該労働者の能力,人物,実績等について掌握し得る立場にある人事部長に退職承認についての利害得失を判断させ,単独でこれを決定する権限を与えることとすることも,経験則上何ら不合理なことではないとして,控訴審の上記判断を破棄しました。❹ 岡山電気軌道(バス運転者)事件(岡山地判平成3年11月19日労判613号70 労働者が,自己の所属する部署を管掌する常務取締役兼観光部長に対し社長を宛先とする退職願を提出し,翌日にこれを撤回したという経過の下,常務取締役兼観光部長が退職願を受領したことをもって承諾の意思表示をしたと認められるか否かが問題となった事案です。 裁判所は,会社の職務分掌規程上従業員の任免等に関する事項は労務部の分掌とされていること,職務権限規程上も常務取締役兼観光部長に観光部の従業員に関する人事権が分掌されているとの明文の規定はないこと,通常の退職願承認の手続上も,観光部の従業員に関する人事権が常務取締役兼観光部長に分掌されているとは解されないことから,当該事案において,常務取締役兼観光部長による退職願の受領が承諾の意思表示には当たらないと判断しました。

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