労判
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iはしがきはしがき 労働法の分野では,法律の条文のみからは判断基準を導き出せない争点が多く,そのような争点についてはこれまでに蓄積された数多くの裁判例により形成されたルール(一種の判例法)に基づいて事案の解決が図られることから,人事・労務管理において,裁判例の理解が重要なことは皆様もご認識のとおりです。 例えば,解雇の有効性に関する解雇権濫用法理は,労働契約法16条に「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と規定されていますが,これだけでは,実務上,どのような場合に解雇が有効となるのかは見当もつかないため,過去の裁判例を参考にしながら,どのような場合に「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当である」と認められるのかを探っていく作業が必要となります。 一方で,労働事件に関しては,毎年数多くの裁判例が出されており,どの裁判例が重要であり,どの裁判例が重要でないのかについては,専門家でも判断が難しいところです。また,実際に生じる人事労務上の問題には多種多様なものがあるため,どの裁判例を参照するのが適当であるかについても判断が難しいところです。 そこで,本書では,採用から退職まで,実務で問題となることの多い33の事例について,押さえておくべき142の基本判例を挙げて解説しています。 基本判例の選定にあたっては,人事部が社内で相談を受けたり,弁護士や社会保険労務士が会社から相談を受けたときに,まず参照にすることの多い裁判例を挙げています。

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